
多岐にわたるので、本文論述のガイドラインともなるように概要を書いた。
誤解のないように断っておくが、ペレットは大型インコ用に開発され、その目的で使用するには推奨されるべきものだと思っている。ただ、鳥種による相違をわきまえず、手のひらサイズの小鳥にも同様な必要性があると見なした点に問題があり、四半世紀を経た現在は、本来の2倍の栄養(脂肪価≒エネルギー量)を持ち、換羽や繁殖時に推奨されていたものを、日常食に位置付け直すようなことになっていると、ハリソン社の製品説明を読む限り、受け止める以外なくなっているのは残念、としなければならない。さらに、そのメーカー側の認識の変化を、しっかり受け止めている使用者は少ないように思われ、とても問題だと思う。特に、他人に薦めたり売ったりするような人は、メーカーサイトのチェック程度は行ってもらわないと無責任のそしりは避けられないのではなかろうか?
四半世紀前の行きがかりがあるので(使用者から「ハリソンのペレットはラウディブッシュとは違うんです!と苦情を受けた)ハリソン社の製品を取り上げているが、同社は原料をオーガニックにこだわったり、その原材料もいろいろ工夫し改良を続けていると思われ(雑穀や海藻類は当初のものではないと思う)、個人的には比較的に好印象しかない。
日本で一部の鳥系の動物医療の臨床医が、2000年頃から激しく「推し」活動しているのは、商品名のフォーミュラを処方と訳して、何か偉い先生のお墨付きがある「処方食」と勘違いしたのではないか疑っているが、たんにメーカーが最善と信じる配合で調整しただけで、その点は他のメーカーと差別化はできない。各メーカーが最善と信じる方法でそれぞれ勝手に商品化しており、どれが一番優れているとは言えないのである。
誰かや何かにすがって信じるのも良いが、この場合、影響を受けるのは実際に食べる小鳥たちなので、軽率なだけかもしれない他人の推奨を鵜呑みにせず、それぞれの飼い主がしっかり考えてから使用し、問題があれば、即、やめた方が良いかと思っている(輸入価格が爆上がりしているとか、そもそも輸入が滞り品薄だ、と言うのも、実に真っ当な変更理由である)。うまくいっているなら、別に変えることもない。
以上は前口上、以下、概要
おもにアメリカ合衆国のメーカーが製造する鳥用ペレットは、元々大型インコでの使用を目的に開発されたもので、文鳥などの小鳥を対象にしたものではない。ペレットの中でもオーガニック原料を使用したものとして評価が高かったハリソン社の製品の場合、文鳥にも「ADULT LIFETIME」、成鳥の日常用だけで飼育できると宣伝されていたが、現在のメーカーの説明では、脂肪分が2倍の「HIGH POTENCY」高効力、ハイエネルギータイプが活発に動く小鳥や寒冷地の小鳥の常用食として推奨されている。つまり、従来推奨されてきた日常食タイプでは、低エネルギーで活発に動き回れなくなることが示唆され、それは個人的な観察で疑念を持っていた点であり、かなり一般的に起こっていたと見なしえる。
また、低エネルギーで消化の良い食べ物から、活発に動くためのエネルギーを得るために過食から肥満を起こし、さらに結果的に不適切な食事制限により拒食状態(≒飢餓)を招き、摂食障害で健康を損ねるという因果関係の説明にもなりえる。健康な文鳥は、寝ている時以外いつでも食べているが、水浴びも出来ないような環境でなければ、肥満になることは無い。つまり、殻付きの自然なエサを主食とした場合、何らかの理由で栄養の吸収が抑制されていると推測されるが、残念ながら科学的な究明はなされていない。
ただ、摂食の問題は食べ物の栄養成分のみでは測れず、採餌行動が及ぼす身体への影響を理解する必要があり、その点、ペレットは問題意識が希薄と言わねばならない。例えば、人においては「少食多噛(しょうしたぎょう)」という表現が江戸時代からあるように、よく噛んで食べることで満腹感を得やすくなって大食いが抑制されるとされるが、同様に、殻をむいて食べることにより大食いが防がれている可能性も考えられる。
今日の動物の飼育では、エンリッチメント、動物たちが活き活きと活動して繁殖できるような環境を用意する努力が続けられている。文鳥においては、ペレットが開発されるはるか以前から、代々繁殖されおり、その点エンリッチメントは最低限でも満たされていたと考えられる。一方、ペレットは日常食用としていたものは不向きで、換羽や繁殖用とされた2倍の脂肪分を含む方が活発な小鳥に推奨され(活発でない文鳥は、その多くは病気である)、さらに栄養が必要な繁殖期用の製品が今のところ用意されておらず、繁殖に適さないと言う意味ではエンリッチメントに則した食べ物とは見なしがたい。
従って、文鳥を低エネルギーでおとなしく従順にさせられた家畜ではなく、活き活きと元気に羽ばたき鳴きこちらをキラキラした目で見つめる伴侶として飼育する場合、残念ながらペレットは、開発から今日に至るまで不向きであり、従来の穀類に青菜やボレー粉などを組み合わせるのが無難と言わねばならない。


