「ハイター」を使いなさい

 小鳥の宿泊所をしていると、持ち込まれる水入れがとても汚れていたり、熱湯をかけて変形させたような跡があったり、驚くことがある。なぜ、台所用漂白剤、つまりは次亜塩素酸ナトリウム、長らく親しまれた商品名なら「ハイター」を使用しないのであろうか?ちょっとボールに水を入れて「ハイター」少々を加えたところに浸け込んで、一時間ほどで水洗いするだけではないか?なぜそれをしない?
 で、たんにずぼらなだけでなければ、小鳥関係なら、思いあたることもある。10年以上昔の話だが、小鳥の専門医として名高い小嶋篤史氏が、このごく一般的に使用される漂白剤を使わないように吹聴しているらしいと仄聞していたからである。うわさ話だけではない。もちろん、この動物医療以外では何ら専門知識を持たず非常識であって構わない立場の一個人に過ぎないのだが、『コンパニオンバードの病気百科』(2010年)P154に、「空中の毒素」の一つとして次亜塩素酸ナトリウムをあげ、塩素ガス(書中では「塩素」とされているが、アルカリ性と反応して気化したものを問題とするので、ここでは「ガス」を付けて表現する)を発生させないための「最も有効な予防法は、塩素系消毒剤を使用しないことです」と結論付けているのである。

 しかし、この結論は、指を切ったり殺人に使われるから包丁は使わないとか、交通事故を起こすから自動車は禁止すべきだ、といった議論同様の極論ではなかろうか。
 確かに、何でも混ぜたがる日本人は、かつて、強酸性の洗剤、「さんさん酸が効くサンポール」にアルカリ性の「ハイター」の類を混ぜて、それもトイレや浴室といった密室で実行したので、中和作用で生じた塩素ガスにより死亡するような事故があり、結果、「まぜるな危険」などの表記が施されるようになっている。
 しかし、それは混ぜた場合の話だ。それもほとんど原液状態で換気も無しに実行というより実験した場合に限られる。それでは、みなさんは「ハイター」でふきんを漂白していて中毒死した人の話を聞いたことがあるだろうか?もちろん、私は次亜塩素酸ナトリウムをフツーに愛用し、文鳥の水飲み器のヌメリを取るのに使っているが、もちろんガスなど発生しないし、しっかり水洗いするので何の問題も起きていない。念のため言っておくが、ヌメリとは雑菌の巣であり、それに汚染した水は腹痛などを引き起こす原因にもなるので、清潔を保つのが無難だ。そのためには塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)は、はなはだ有効でほとんど代えがたい存在なのである。

 もちろん、通常使用することにおける安全性の科学的エビデンスも、実際に使用し続けている現実を無視して、小鳥の飼い主に対し使用を控えるように意見するのは自由だが、そのような非科学的な言説は、専門における客観性を疑わせることにもなるだろう。
 自分の専門性を誇りたければ、学者バカと言われる如く、まず大概は専門外については無知蒙昧や非常識に陥りやすいことを、肝に銘じるべきではなかろうか。
 ・・・もっとも、獣医師を含め医師は、公衆衛生において専門性を有するべき存在とされているので、衛生的な環境を保つことに資するべきは責務とも言える。となれば、そもそも次亜塩素酸ナトリウムの否定など許されるべくもない立場のはずだが・・・、ツンと来る臭いが苦手なのだろうか?私も児童生徒の頃、銭湯の一番風呂におけるツンとする臭いとヒリヒリするお湯に閉口したものだが(使い過ぎだろう!)、衛生上有用性を幼稚な自分の主観で覆すことは無理であろう。

 食器に「ハイター」は有効だ。鳥の物でそれを避ける理由はない。わけのわからぬ思いこみを吹聴する非科学な人物の妄言を信じて、食器を不衛生にしないように気をつけたいものである。

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