「甲状腺 ブンチョウ」で検索したのだが、まともな見解はわずかであった。
小嶋君(『リトルバード』の院長小嶋篤史氏だが、年少なので君付けにする)が『コンパニオンバードの病気百科』(2010年)で記載した中味を鵜呑みにするだけのものばかりであった。他人に自分の存在を誇示して公開するなら、少し考えてからにすれば良いのに、『鳥類臨床研究会』で小嶋君でさえ実証できないいい加減な話を聞く勉強会でもあったのか、2024年付けのブログで、鳥のヨウ素不足の問題を取り上げているケースが散見された。「こんなこと聞いてきたのでレポしちゃいます。でも聞いた話って書かないけどね」、ガキか?高校生なのか?利いた風な口を出所不明で文字化したら、責任を問われることもあるのだぞ?責任がある立場なら、自分の責任で内容を検討して、自分の責任においてものを言え、と、私は思ってしまった。
つまり10年以上も経過したのに、まったく有意義な新しい意見など見出せないのである。
よろしいか。セキセイインコのヨウ素欠乏症は1950年代には研究対象とされ、1980年には欠乏に至る原因や、薬物を与えた際の過剰症についても広く知られ、1994年には、鳥類の専門医の泰斗である高橋達志郎先生が、「治療にはヨードグリセリン液を用いますが、早期に投与すると大変効果があります。25ccの飲み水の中に一滴たらし、毎日新しくかえて三週間連続投与し、その後一週に二回ぐらい投与する日を決め、他の日は普通の飲み水を与えます」、と、普通の飼い主にもわかるように書いている。
私は高橋先生にお会いしたことすらないが、25㏄(ml)で換算したのは、おそらく飼い主が入手しやすいコバヤシ社のボレー粉入れ(小)の容量に合せた結果だろう、予防的に与える場合に週1回としたのは、過剰になる心配よりも、必要以上に薬入りの苦い水を飲ませたくなかったからだろう、くらいの想像は出来る。それが正鵠を射ているかはわからないが、そのような想像をさせるほど、患者の小鳥や飼い主に配慮できる人こそ、真の臨床医なのだろうと信じている。
私は、現在30羽を超える文鳥たちと暮らし、さらに10羽を超える繁殖用と位置付ける文鳥の世話をし、さらに十姉妹2羽、キンカチョウ8羽、セキセイインコ1羽も飼育する立場にある。文鳥は1995年から20代目まで約30年の経験的蓄積を持っているが、2010年段階で小嶋君が「甲状腺腫の最も頻度の高い症状は、気管および鳴管の圧迫による開口呼吸(ヒューヒュー、キューキュー、ギューギューなど)です」としている症状。また、1994年段階の高橋達志郎先生がより具体的に「特に夕刻および朝に発作がおきやすく、小鳥は止まり木の上で、苦しそうにあえぎ、ヒューヒューと妙な声を連続的に発します。はじめのうちはときどき発作が止まり、治ったかなと思っていると再びヒューヒューやりだすといったぐあいに、調子のよい状態と悪い状態が現れます。だんだん症状が進行すると、発作は朝、夕にかぎらず、四六時中ヒューヒューいうようになります」されていた症状を示す文鳥を見たことがない。
確かに、小嶋君が指摘し、また昔からのセキセイインコにおけるヨウ素欠乏症の研究に明らかなように、主食の穀物にヨウ素は期待できず、おそらく軟水が多いはずの日本の水道水にも頼れない。エサは穀物の配合餌が主食、それに毎日小松菜と豆苗、ボレー粉、アワ玉だ。カゴから出した際にほぐした煮干しがかじれるようにしているが、大量に食べる子はいない・・・。私の考え方では、ミネラルの給源はボレー粉で、普段あまり食べないので配合エサに混ぜており、これがヨウ素の給源になると認識する他ないのだが、小嶋君は「ボレー粉には約0.5mg/100gのヨードが含まれ」ているので、ボレー粉のみからヨウ素の必要量を摂取するには、「毎日0.5g以上食べなければなりません」としていた。
1980年の『鳥の飼育と疾病』に載っていたのは、ヨーロッパの軟水地域におけるセキセイインコのヨウ素欠乏症で、1994年の高橋先生もセキセイインコに多い病気として喘息を起こす甲状腺腫を挙げており、いずれもセキセイインコの問題であった。
ところが、2010年の小嶋君は「甲状腺腫はセキセイインコに著しく、死亡原因の2番目に多く」「報告は少ないですが、ブンチョウにも著しく多く、その発生頻度はセキセイを上回る可能性があります」とした。以前よりヨウ素不足による甲状腺腫の危険性を唱え、ヨウ素の添加を薦めて来た小嶋君の病院(『リトルバード』)に限って(「報告は少ないですが」は他の病院での例が少ないという意味以外には解釈できない)、甲状腺腫になる文鳥が著しく多いとしていたのである。
2000年当初の小嶋君のヨウ素欠乏への問題関心は、理由の無いことではなかった。穀物食と硬水以外の飲み水での飼育では、ヨウ素欠乏により甲状腺腫が多発することは、セキセイインコにおいて実証されていたので、それへの注意は、特にセキセイインコ飼育者が持つべき知識だったのである。
しかし、若き小嶋君は、ヨウ素不足に対するヨウ素の添加には、最初から過剰の危険性が伴い、ヨーロッパの研究者も高橋先生も、その点で配慮を怠らず、指摘もなされていたにもかかわらず、過剰を重視せず欠乏症の危険のみを煽った。さらに2010年の段階では、欠乏症を引き起こす可能性が多少あるコイドロゲンにこだわり、確かな根拠は無いが塩素が甲状腺に悪影響を与えるとする話に飛びついて次亜塩素酸ナトリウムまで否定するに至った。これは、科学ではない。
では、小嶋君の拠って立つところ、金科玉条の如き、「オウム目スズメ目全体の栄養必要量」にあるヨウ素量が如何におかしなものか、2006年にすでに「『AVIANMEDICINE』というどこかの国の研究雑誌か何かで10年以上前(1994年)に提示されたらしい、「オウム目スズメ目全体の栄養必要量」にあるヨウ素の1日の必要量100gあたり0.03mgという数値」としたものを補強しておこう。
小嶋君は、「ボレー粉には約0.5mg/100gのヨードが含まれ」とする根拠を示していない。仕方がないので、カキ殻を飼料に加工している鳥羽市開発公社が製品内のヨウ素含有量を数値10gあたり49ppmとしているのを信頼することにしたい。単純な換算で1mg=1000ppmとするなら、0.49mgとなり、小嶋君の「約0.5mg/100g」とほぼ同じだ。
問題は「オウム目スズメ目全体の栄養必要量」の信頼性に尽きるのだが、そもそも十姉妹からキバタンまでを対象としたヨウ素の必要量1日100gあたり0.03mgは、人間の必要量に対して過大に過ぎる。
これも2006年段階で指摘済みだが、原発事故後に放射性ヨウ素の過剰摂取が問題になったのを受けてか、厚生労働省が2015年に「日本人の食事摂取基準」を公表しているので、今回はこちらを元にしよう。そこで示された日本人の推定平均必要量が1日0.095mg、推奨量が1日0.13mgだ。これを単純化すれば、おおよそ、人は1日でヨウ素をおおよそ0.1mg必要とする、と見なして良いだろう。これを質量比で見れば、文鳥は人より2千分の1の重さでしかないので、0.00005mgとなる。
数字が多くて頭が痛くなるが、約0.5mg/100gのヨウ素を含むボレー粉のみで必要量0.00005mgをまかなうには、ボレー粉1gに0.005mgなので、0.01g、小嶋君が1994年に根拠は無いが信じた数値0.5gの50分の1に過ぎないわけだ。つまり、ボレー粉ではヨウ素をまかなえないとする説の根拠は大いに疑われ、「オウム目スズメ目全体の栄養必要量」を検証することなく信じてしまい、その数値に躍らされただけの似非科学者は反省を迫られることになるだろう。
これは、ボレー粉が比較的に多くのヨウ素を含んでいる結果ではない。ヨウ素の含有量なら殻よりも中身の方がはるかに多いのである。つまり、さしてヨウ素を含まないボレー粉でも、小指の先ほど食べれば、人の2000分の1に過ぎない質量の「一寸法師」が必要とする1日のヨウ素必要量に達してしまうのである。
ある文鳥の飼い主は、シードと豆苗だけで飼育し、甲状腺腫にしてしまい、『横浜小鳥の病院』に5回にわたって通院し、レントゲンでの診断を受けて、1回1万円ほど支払って完治に至ったという話も見かけた。・・・特別甲状腺に問題を起こしやすい子でなければ、おそらくシードにボレー粉が混ざっているだけで、問題は起きなかったのではなかろうか。もちろん、『横浜小鳥の病院』の診療は完ぺきだったと言えるだろうが、単純でも良かったし、そうした選択肢もあったはずなのである。
レントゲンで甲状腺の様子を確認するのは当然かもしれない。しかし、甲状腺腫の場合「ヒューヒュー」開口呼吸が再発しない限り、レントゲンを毎回撮影しなくても良さそうにも思える。治ったのを確認しなくても症状がでなければ治ったのだろうと推認できるという意味である。
いろいろ情報を集め、正しく副食を与え、それでも病気になったら・・・、診療方針もある程度把握しなければならない。飼い主は大変である。
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