
なぜなら、いったいどれほどの栄養が必要になるのか、皆目わからないからである。ペレットは、必要量を今の科学力で類推してそれに近づけたものにしている人工飼料だが、産卵期育成期で十分な量が不明で、メスとオスでの違いは量だけの問題なのかもわからなければ、それぞれのペアで育雛比率も違っており、とてもではないが「適量」を与えることが出来ないのである。もちろん、より解明の難しい問題もある。硬いものを食べるように進化した生き物に軟らかいエサを与え続ければ、関係する器官の働きは弱まるだけではなく、腸内細菌の構成はどうなるのか、子々孫々に本来必要とされるのかもしれない細菌が継承され得るのか。そんなものが存在するのかさえ分からないが、文鳥以上にセキセイインコは単品食の傾向が強いので、何かありそうだと考えた方が良いと思う。
ペレット会社はどのように考えているのか、以前ハリソン社は「ハイポテンシー」という栄養面を強化したものの使用を進めていたように記憶しているが、長らくお奨めされていた海老沢さんのショップ(前はハリソンの代理店とあったような気がするのだが、現在はラウディブッシュの代理店らしい(この会社は四半世紀前に最もポピュラーな存在だったが、輸入したそれから社員総出で夾雑物を取り除くのが大変などと自ら暴露していた珍しい輸入元が倒産した後、消え去っていた。最近復活したのは喜ばしいことだ)。そのあたりの経緯は存じ上げず)では(サイトの商品ページ)、「高栄養価を必要とする鳥用」「換羽期」「肥満または体重不足」「活発で運動量が多い」「寒冷地で暮らしている」「病気からの回復期」とあって、繁殖期については触れていない。これも憶測だが、実際の繁殖に用いると栄養不足が起きるのではないかと思われる。特にミネラル面が異常な必要量でそれも短期間であるため、製品に添加しがたいのではなかろうか。
なお、宿泊所にお預かりした文鳥に、メンテナンスタイプだけの文鳥がやたらおとなしいのに対し、「ハイポテンシー」の子は(1組だけだったが)、とても元気で色つやピカピカだったので、文鳥のような「活発で運動量が多い」のが当たり前の鳥種では、こちらの方が向いているのではないかという印象を現在持っている。おとなしいと思ったら、栄養不足を疑って、こちらに代えてみても良いかもしれない(まだ若くシードを食べる能力が残っていればシードに代えた方が良い)。・・・でも、10月から品切れか。さらに憶測だが、アメリカ合衆国は日本以上に物価高が進行中で、先日アマゾンでメンテナンスタイプの価格差をみたら、日米の価格差がほとんどない状態であった。ということは、物価高以前の日本での価格は、大幅な上昇を余儀なくされるのではなかろうか。シードの方も健康不順その他で不安な面も多々あるが、そうした面でも、ペレットはやめておいた方が良いだろうに、とは思ってしまう。
さらに付言するなら、殻をむくという行為には、消化酵素の分泌を促している可能性なども考えられ、それがどの程度身体活動に影響を及ぼすか、想像することすら不可能なほど、我々人類は無知である。栄養面でのみものを考えても、実際は食べ物と食べ方と身体活動には複雑な相関関係があり、わからないことの方がはるかに多い。
したがって、おそらく本来の、その生き物がその生き物になってその生物であり続けさせてきた食性を捨てた場合、3代程度で「貯金」を使い果たすと、まったくの当て推量だが私はそのように考えている(親は持っている子は半減する孫はゼロベース、といった単純な発想)。もし、さらなる代重ねが可能なら、ダーウィンフィンチのごとくクチバシの形状変化も有り得るし、少なくともその飼育方法で現在の形状を保つ理由は無くなっているのだが、そのようなことを考えたことがあるのだろうか?それがどのような影響を及ぼすのかはわからないが、悪い影響しか想定できないかと思う。
博学を誇る鳥系の獣医さんたちが、ほとんど笹しか食べないパンダに、「それは体に悪いからやめた方がいいよ」とか言うのも同然に、ほとんど穀物しか食べないセキセイインコに対し、「それは硬いからやめた方がいいよ」と真顔で言える人たちだと知って、私は心底がっかりしている。野生でのありかたを受け止めそれを飼育に役立て繁殖につなげようというエンリッチメントの考え方とは対極にあるとしか思えないからである。
さて、別にエンリッチメントなどというカタカナ語の実現を目指したわけではないが、気づけばエンリッチメントだったウチの野生の王国では、老いも障害も病気も、みんな仲良く?がんばってくれている。外敵はいないので野生よりはるかに長生きだが(画像の子たちが野生で生きていられますか?)、若い頃は「太く」生きて、メスは産卵してオスは交尾ばかりして「太く」活き活き生きてきて、その延長で老いても運動量が要求されるため、細く長くは難しい世界ではあるが、長生きの飼育記録を目指してはいないので気にしない(この点、最初からまったくぶれていない)。
私の脳内の理屈としては、老いてはペレットの方が胃腸に負担なく健康を保てるのでは、となっているのだが(人間も若い頃鍛えた肉体を老いては養生しながら過ごすのが長寿につながる生き方だと思う)、実践はしない。食べなれたものを置き換える際の抵抗の方が、よほど健康を損なうと思っているからである。そして、食べなれたものを死ぬ間際まで食べたところで、問題にならない事例ばかり目の前で実際に見ているためでもある。
今さら野生に学ばなくと、21代も続いていれば不足はないだろう。目の前の野生から学ぶのに専念したいものである。
↓トッピが育てる江戸系白と何だか白の子たち。↓↓脚がないナイはみかんを吸うのが好き。↓↓↓煮干しをを加えて自慢しまくり横取りされそうなほっぺ腫瘍のマダラと、奥で殻むきしている7歳のさっちゃん。




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