文鳥ヒナに脚気なんてないさ

栄養性脚弱症などウチでは遠い遠い過去のもの

 私は文鳥の特にヒナの時に起きる栄養性脚弱症の原因を、小学生のころから脚気(かっけ)と認識していたような気がする。しかし、なぜそのように思いこんでいたのかはわからない。愛読していた文鳥の飼育本にはビタミンB1 が不足して脚気になった結果とは書かれていないのである。
 1980年代、私が子供の頃に見た脚弱症で腹ばい歩きをしていたヒナの記憶と、「脚気」という言葉が意識の中で関連づいているので、そういう単語を子どもの頃に聞いたのかもしれない。その後も深く考えずに、ビタミン不足、ビタミンD3(3は小文字だが面倒なので、ビタミンの数字を小文字化しないで表記する)ならクル病および骨軟化、ビタミンB類なら脚気と見なして、認識が固定化されていた。
 このたび確認したところ、脚気については『文鳥団との生活』の三カ所ほど記載があり、最も古いものは、上述の腹ばい文鳥について触れた文章(旧王朝)に加えた注意書きで、ファイルの最終更新は2004年3月となっている。それは以下のようなものだ。

※ カルシウム不足による骨の未形成、ビタミンD不足による人間のくる病と同じ症状、ビタミンB1不足による人間の脚気と同じ症状、こうした諸要因による歩行困難を脚弱症と総称するもののようですが、差し餌段階の文鳥のヒナの場合は、総じて栄養失調と言って良いと思います。

 この考え方は、20年以上経った現在、以下に変わっている。

 文鳥の栄養性脚弱症は、主にカルシウムとビタミンD3が不足することで起きる骨軟化症のことである。なお、ビタミンB1はムキアワにさえ十分含まれていると推定されることから、これが不足することで起きる脚気が主因となるとは考えにくい。従って、カルシウムとビタミンD3を補うことが、医療的対処として望まれる。

 何しろ、我が家では栄養性脚弱症は見られず(先天性の疑い濃厚な1羽のみ)、ブリーダー化して200羽以上も差し餌をし、孵化1カ月以降飛び回りつつ居残っている子も多いが、栄養性脚弱症は疑い例すら起きていない。つまり私にとっては過去の病気、ヒナの餌にパウダーフードを加えるだけで解決する簡単な話となっていたのだが、例の『コンパニオンバードの病気百科』はそれでは許してくれなかった。
 とにかくアワ玉での差し餌を否定することに気持ちが悪いほどの情熱を注いでおり、否定するバイアスからいろいろ理屈を並べ、「アワダマはほとんどVB1を含まない飼料となってしまいますと断言する始末だ。栄養価の測定をするための機材を使えないただの物好きな素人が、憶測から妙な屁理屈を組み立てるよりも、アワ玉(私は玉をダマと濁って発音しない。濁音にする方が古風で昔の鳥好きの話し言葉かと思う)の試料を民間の分析ラボにでも持ち込んで、調べてもらえば良いだろうと思う。検査項目がビタミンB1のみなら、経済的にもたかが知れているだろうに。
 問題は、この「百科」を教科書のように根拠がしっかりした正確な内容と勘違いさせる点だ。勘違いした獣医さんが、次のようにネットで解説されているので、ご一読いただきたい。なお、犬猫を中心にしながら小鳥の医療も出来るように努力されている素晴らしい獣医さんが、脚弱症をビタミンB1不足とのみ考え、カルシウムやビタミンD3 の処方をしないように願うところだ。

 「たくさんの栄養素が必要な巣立ち後の幼若期に見られ、特にアワ玉のみの挿し餌で飼育されている幼鳥が最も発症しやすいです。ビタミンB1は穀類に含まれ通常欠乏しませんが、アワ玉を作る過程で殆どが減少してしまうので、アワ玉のみでは欠乏するのです。更に、巣立ちの時期には運動量も増えてB1消費量も増加してしまうのです。
 欠乏状態になると、神経の糖代謝の阻害が起き、多発性神経炎が起きます。最初は脚のしびれや筋肉の痛みから、跛行(びっこ)が始まり、片足から両足と進行します。
 やがて、足先だけで体を支えられなくなると、かかとをついて歩くようになり、嘴や翼を使って移動するようになります。更に進行すると、呼吸困難や循環障害、脳神経障害によりケイレンを起こして死亡してしまいます。予防は当然ながらビタミンB1豊富な食餌給与であり、幼若鳥用のペレット、もしくはパウダーフードが適切です」

 穀物飼料こそが最もB1を多く含む自然食品で、それがため「百科」は加熱したら減る、湯漬けにしても減る、とか何とか無理に無理を重ねて、むきアワから作られたアワ玉にビタミンB1 はほとんどないことにして、加工食品であるアワ玉否定に躍起になっているだけなのだが、その意見の影響を受けた批判力のない人は、穀物全体がビタミンB1が少ない、といった大きな誤解を持っことになっているわけだ。

 お前こそアワ玉の有効性を証明しろ?なぜ私が!!懐疑的な人が多少のお金と手間をかけてラボに試料を持っていけば良いだけで、繁殖期の文鳥がボレー粉とアワ玉を抱えるようにして頬張る以上、何か効果があるはずだと与え続け、それで20代続けるは何百羽とヒナを育てている現場の人間が、飼育の現場を知らない研究者ですらない素人が、机上でする妄想から並べ立てている小理屈の立証に手を貸す必要があるだろうか?それでも、せっかくなので、親切な私は栄養成分データベースの利用をお勧めしてやる。ありがたく思え!

 忙しくて調べられないあなたのためにもっと忙しい私が「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」のデータベースにを使って、それぞれのビタミンB1含有量を調べよう・・・。得られた数字は、それぞれ100gあたり、白米0.08㎎、玄米0.41㎎、あわ(精白粒) 0.56㎎だ。つまり、白米のビタミンB1含有量は玄米の五分の一に過ぎず、これではビタミンB1が不足して脚気になるのも当然なのは理解できよう。一方で、むきアワは玄米よりもビタミンB1を多く含んでおり、これを食べていれば、常識的にB1が不足するはずがないことくらいは、常識のレベルで認識していただければと思う。
 小鳥は粟粒をそのまま食べているが、人は米を生では食べない。そこで成分表で炊いた玄米が含むビタミンB1を確認すれば、0.16㎎だ。つまり加熱するとビタミンB1は半分以下になるが、その程度でも人は脚気にならない。「百科」はつぎはぎの理屈だけだが、こちらの立証は明らかである。水に浸して沸騰加熱しても「ほとんどVB1を含まない」状態にはなってくれない、だ。

 湯づけエサになった時、ビタミンB1がどの程度減少しているかは知らない。玄米の炊飯結果から推測すれば、半減以下にはなるがかなりの程度は保持されると言える。それより個人的な経験では問題が起きないので、調べる気にすらならない。何のためかは知らないが、湯づけエサ状態の粟粒にはビタミンB1がなくなることを立証したければ、ご勝手に試料を持ってラボに依頼したら良い。
 万一、ほとんどなくなっている結果でも、「だから、パウダーフードで補ってるんじゃない?」で終わりなのだが、とりあえず自己満足は得られるはずだ。

 ともあれ、栄養性脚弱症をビタミンB1不足とするのは無理がある。クル病(骨軟化症)として認識するように、啓蒙して頂きたいものである。

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