無病息災が基本

フジとオトメ

 顔のデカさが違う・・・。ノミの夫婦・・・。カゴの底で赤むけヒナ姿で昇天するはずだったフジも、大きな女房の羽づくろいをする小さな幸せの中にある。命拾いしたのは偶然で、その根本はキンカチョウの生命力が強靭だからであり、おそらく病気知らずで一生を送ってくれるだろう。

 さて、初心者が小鳥の飼育を始める際に、専門性の高い獣医さんを探しておくのは、とても素晴らしい心がけだ。しかし、ブンチョウにせよキンカチョウにせよ、無病息災で天寿を全うさせる医者知らずが究極の目標、であり、飼い主がフツーに雑に扱っていても、そのような一生を送れる子が多いのも事実であることも、しっかり認識すべきかと思う。その見つけておいた動物病院に行かないで済むのが、究極の目標なのである。
 獣医さんの中には、人の寿命よりも長いような大型のインコと、10年未満の小鳥を混同される人も多くいて、定期検診をしていれば病気予防につながる、などと勧めるかもしれない。しかし、100年生きる生き物なら病気の進行も緩慢で早期発見早期治療もあり得るかもしれないが、10年未満の寿命では病気の進行も早く、神でもなければ早期発見など出来ないのが現実だ。逆に言えば、10年未満だから、文鳥は無病なまま天寿を全うしやすい。
 簡単に言えば、病気になっている暇はなく、病気にかかれば手の施しようのない状態に、数日にして陥ってしまうものなのである。半年前に定期検査したところで、何の意味もない現実をしっかり認識しないと、動物病院に頼り裏切られることになる。

 例えば、有名な小鳥の獣医さんが「報告は少ないですが、ブンチョウにも著しく多く、その発生頻度はセキセイを上回る可能性があります!」と3200円余の百科本に書いていれば、鳥類臨床研究会などで認識を共有していると思って不思議はないが、「報告は少ない」のに勝手に思い込んでいるだけかもしれない。
 ヨウ素不足による小鳥の甲状腺腫については、高橋達志郎先生が、1994年の『小鳥の飼い方と病気』に「セキセイインコに多い病気」の一つとして挙げている(P97「喘息」)。

 「原因は甲状腺の機能不全によるもので、甲状腺腫から甲状腺癌になることもあり・・・」

 「治療にはヨードグリセリン液を用いますが、早期に投与すると大変効果があります。25ccの飲み水の中に一滴たらし、毎日新しくかえて三週間連続投与し、その後一週に二回ぐらい投与する日を決め、他の日は普通の飲み水を与えます」

 「予防のために、一週に二日ぐらいは同様にヨードグリセリン液を滴下したものを与えるとよいと思います」

 以上が、小鳥臨床の巨星が、880円の一般書で、教えてくれていたのだが、それすら読んでいないか理解していないような者が、1970年代や1980年代にはセキセイインコと比べて症例がほとんど無かった文鳥の甲状腺腫を、「ブンチョウにも著しく多く、その発生頻度はセキセイを上回る」などとして、過剰症を引き起こしたのが現実である(2010年段階での話、現在どのようにしているかは未聞)。
 頑張り過ぎず、無病息災、困ったら獣医さん、それで良いのである。

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