
文鳥が選り好みして食べるカナリアシード(カナリーシード)を脂質が多いとするのは根拠のない話であった。私はなぜ好きなのかわからないが、親が食べているならヒナのエサに使っても良いだろうという単純発想で、殻をむいたカナリアシードを購入して与えたところ、驚くほど不評であった。
なぜなのか、何らかの栄養価が高くそれに魅力を感じるのなら、殻をむいたカナリアシードも食べたはずだ。実際、殻をむいただけの粟(あわ)は無視されても、あわ玉は好まれるので、殻が無くても栄養的な魅力があるなら、需要もあるだろう。
では、何が魅力なのか?殻の有無で違うのなら、殻をむくのが楽しいのだろう、というたぶん独自の結論に達した。
ところが、昨晩、セキセイインコのものの食べ方を調べようと思ったら(私は穂にしがみついて食べることが多いと思っていたのだが、地面の拾い食いも多いという話で、確かにピヨの奴は食糞とか拾い食いするな、と思い、野生ではどんな感じかわかるかな?といちおう確認したかった)カナリアシードはタンパク質を20%以上含む優れた食べ物とされるサイト(『ハッピーインコライフ』)があり、その情報源が、またか・・・の海老沢さんであった(2020年のツィートらしい)。
しかし、その典拠(出典)がわからない。念のため言っておくが、「海老沢さんが言った」は何の根拠にもならない。どこにある数値なのかわからないのでは検証もできず、はっきり言えば意味がない。どうも海老沢さんには、データの典拠を明示する習慣が無いようだが、科学的な研究、学問においては、典拠こそがすべてだ。典拠を求め、その内容を検討して批判を加え、論理的な説明として納得できるようなデータでなければ、使えない。そのデータに学問的な信用性を得るには、その典拠が信用するに値するかを確認し、さらに他のデータと突き合わせて妥当か否かを、客観的に検討しなければならないのである。
海老沢さんにせよ、その情報を鵜呑みにするだけの人たちは、おそらく高校生までのお勉強の成績は良かっただろうし、今現在も知識欲があって頭脳も明晰であるに相違ない。しかし、典拠のない話は学問ではなくうわさ話にしかならず、誰の情報であれ、自分で検証せずに拡散すれば、無責任になってしまう。典拠を自分で確認し批判を加える、これは人文科学自然科学を通じた鉄則で、大学の教育はそのためにこそ存在すると言える。教科書に書いてあるから本当です。では研究にならないのである(せっかく論文を書いても、データが間違ってました、ではくたびれもうけでしょう?偽情報を流布しただけになるし。インコに限らず、海老沢さんの信者に限らず、文鳥系のライターもそうだったと私は思っていますけど)。
とりあえず謎の数値だが、カナリアシードがタンパク質20%以上とするデータがあるとする。では、たんぱく質が魅力で文鳥は好むのか?と言えば、無知な昔の人たちが「脂質が多ければ好む」としたのと、結局同じだ。殻をむいたら喜ばれないのか?という問いにぶつかってしまうのである。また、そもそも、20%は他と比べて高すぎるという疑問点も想定しなければなるまい。たんぱく質が多い雑穀系の種子として挙げられるキヌアやアマランサスでさえ、15%未満なのだから、いよいよ典拠の確認が必要であり、その作業を抜きにしては議論にすらならない。
せっかくなので、何パーセントでも知ったことではないと思っている私が、情報を提供するなら・・・、市販されている飼料のパッケージしかない。アメージングクラフト(近喜と同じのようだ)は〔タンパク質11.5%以上(脂質5.6%以上)〕、NPFは〔タンパク質15.2%以上(脂質4.8%以上)〕と表示されている(アマゾンで確認できる)。
やはり、タンパク質20%と見なしてそれを真実とするのは躊躇せざるを得ない。もちろん、飼料会社が成分分析をした際に、可食部のみ、つまり、殻をむいた状態のものを試料としたのか、と言った根本的な疑問もあり、中身だけなら20%くらいあるかもしれないが、可能性の話でしかない。
ペレットの原料も同様だが、栄養価は栽培された環境などで偏差がかなりあるので、精微な考察の前提にするのは危険だ(ペレットも三大栄養素くらいしか書けなくなったでしょうが。最初はビタミンの数値まで載せて威張ってたではありませんか?アメリカ製はしっかり数値が書いてあるとか何とか。自然のものはばらつきがあって当然なことすら理解していなかっただけである)。20%と考えても、実際はその半分では、せっかくの計算がまるで狂ってしまうだろう。テキトーにいろいろ与えることができるなら、それが最も無難なのである。
理屈など、どうでも良いさ。海老沢さんどころか、尊敬する高橋達志郎が否定していても、湯漬け餌を食べるのが好きなら与えるだけだ。理屈はそれこそ後から貨車でやってくる。


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