文鳥の基礎的知識(品種) 2009/5


◎ 生後3ヶ月未満の文鳥の性別はわかりません。

 文鳥の性別は、おとなになっても外見だけで明確に判断出来ません。まして、ヒナ段階の外見で雌雄を判断するのは無謀です。
 ほぼ確実にオスとメスを分けるには、さえずり(同じ節回しの連続した鳴き声。文鳥の場合オスによる求愛の歌でもある)の有無を確認しなければなりませんが、オスがさえずりの練習(ぐぜり)を本格的に始めるのは、生後3ヶ月近くになってからです。当然ながら奥手な個体もいますから、生後3ヶ月以上経過してさえずらなくともメスと断定はできないので、生後半年くらいまで100パーセント確実な雌雄判断は難しいと理解しなければなりません。

 性別判別できるまで、一般家庭で手乗りとして育てた文鳥は、その家で家族同然になっていますから、初めから将来的に「里子」に出すことを前提にしていなければ、なかなか他人(特に初心者)に手渡したいとは思えないはずです。従って、何らかの原因で飼育困難になってしまった場合以外では、一般家庭で毎日カゴから出して飼い主と遊んで育てた文鳥を、性別がわかってから譲り受けるのはかなり難しいと考えた方が良いかもしれません。
 つまり、性別がわかった手乗り文鳥を手に入れたい場合、差し餌終了後(ひとりエサ)人間と遊ぶことなく性別がわかるまで成長したいわゆる「手乗りくずれ」を、自分の家で時間をかけて自分の手でふたたび「手乗りに戻す」のが、最も現実的なように思われます。文鳥は個体により性格もいろいろなので、時間がかかり、初めは怖がられることくらいは覚悟しなければならないでしょう。

 

◎ 嫁や婿としてはじめから認識すると思ってはいけません。

 1羽だけで人間と一緒に生活をしてきた手のりの文鳥は、一緒に遊んでくれる飼い主と自分が同じ生き物だと思っています。当然、見たことも無い文鳥という生き物を飼い主が「仲良くしようね」と連れてきても、今までの平和な生活を邪魔する異生物の襲来として攻撃する方が、1羽で育った手のり文鳥の行動として自然です。
 飼い主は文鳥を自分とは違う生き物として愛するのが普通ですが、文鳥は飼い主を自分と同じ生き物として愛しています。つまり、求愛行動をするのは、飼い主を恋愛対象としているからで、そこに飼い主とは外見的に似ても似つかない生き物を、「お嫁さんだよ」「お婿さんだよ」「お友だちだよ」と言われても、迷惑でしかないことが多いのです(少し奇妙な気もするでしょうが、その文鳥君の立場で考えてくださいね)。
 それでも時間が経てば見慣れてもきますし、人間よりも身近に存在すれば仲間意識も生まれてきて、だんだんと仲良くなる可能性は大きいです。時間がかかると考え、もしその途中でケンカばかりしていても(文鳥は「ケンカ上等!」の生き物です。放鳥中や広いケージの中でケガしない程度のいがみ合いなら黙認しましょう)、飼い主が精神的にくたびれないように、事前に心構えをしておきましょう。

 

◎ 文鳥の品種は、白文鳥・桜文鳥・シナモン文鳥・シルバー文鳥の4種類です。

 通常、同じ色柄の個体同士を掛け合わせて同じ色柄の子供が得られ、同一系統内で繁殖、個体の選択をして統一した色柄を保つようにし、その系統が分岐し個体数がある程度増えて初めて固定品種と呼べます。文鳥の場合、一般に流通するほど個体数のある品種は4種類です。
 ノーマルは本来、昔は並文鳥と呼ばれた野生種から繁殖した系統を表現する言葉ですが、異種間交雑により、姿が原種的な濃い色合いで生まれた個体を「ノーマル」 「並文鳥」と表現する場合があります。姿はノーマルと同じですが、遺伝子的にはまったく違う雑種(ミックス)なので、繁殖に用いる場合は注意が必要です(知識がない場合はミックスを繁殖に用いない方が良いでしょう)。

白文鳥

 日本で江戸時代から繁殖飼育されていた原種(ノーマル)の色合いの文鳥から、おそらく明治の初め頃、愛知県弥富地方において突然変異で生まれた品種です。
 メラニン色素の欠損によるアルビノではないため、目は赤くありません。
 外見は同じ白文鳥でも、遺伝子的には少なくとも2系統(白文鳥同士からでも桜文鳥が生まれる系統【弥富系】・白文鳥同士からは白文鳥しか生まれない系統【台湾系など】)存在しています。
 日本の白文鳥は桜文鳥の遺伝子を持っていたり、近い祖先に桜文鳥がいることが多いため、ヒナの時には背中などに灰色の羽毛が存在します。一方台湾産はヒナの頃から真っ白です。

 弥富系の白文鳥は、遺伝子的に25%の確率で中止卵を引き起こすようですが、基本的には丈夫な品種です。

桜文鳥

 並文鳥(原種・ノーマル)と白文鳥との交雑によって生じた品種です。
 桜文鳥同士を掛け合わせていくと白い差し毛が少なくなり、原種とほとんど同じ容姿となります。
 白い差し毛が半分程度に達するごま塩柄の文鳥は、白文鳥との間のミックスと考えられ、本来「桜文鳥」と呼ぶべきではありませんが、悪しき伝統と白い羽の多い桜文鳥との線引きが難しいためあいまいになっています。

 原種の姿を止め、雑種的な要素もあり、もっとも丈夫な品種と言えそうです。

※ 並文鳥は昔インドネシアで捕獲し輸入されていた野生種を指します。毛並みが悪く人馴れしていないため、国内で繁殖された文鳥に比べ劣っている並品という意味で「並」とされました。現在では野生種の捕獲や輸入はない と言って良いので並文鳥は存在しません(現地での生息数が激減している)。
 外見が原種(ノーマル)に近い文鳥を「並文鳥」と表現されることがありますが、これは誤りです。桜文鳥の系統から生まれたのなら、ノーマルな色合いでも品種としては「桜文鳥」 としなければなりません。一方、シナモン文鳥と他品種との交雑などにより、外見がノーマルのヒナが生まれたら、それは「ミックス」とすべきでしょう。

シナモン文鳥

 メラニン色素の一部を欠く個体を、1970年代にヨーロッパで固定した品種です。
 他の品種と掛け合わせると、シナモンの色は子に現れず隠れてしまいます(この現象を「スプリット」と表現する人もいます)。

 本来的に色素を欠くため瞳(虹彩)が赤く、色素による緩和がないため光刺激に弱いと考えられます(明るい日差しの中でサングラスをしていないようなもの)。したがって、直射日光に長時間当てるようなことは避けたほうが良いでしょう。

シルバー文鳥

 メラニン色素の一部を欠く個体を、1970年代にヨーロッパで固定した品種です。
 より淡い系統をライトシルバーと呼ぶなど、プロの繁殖家レベルでは品種内で細かく分けられているようですが、一般の少数飼育者がペットショップで買い求める流通形態を持つ日本では、色の濃淡は無視される傾向が強いです。

 

その他

クリーム・・・シナモンを淡くしたような色彩の系統で、品種となりつつある段階にあります。ただ個体数が少ないこともあり、比較的に虚弱の傾向が現れやすいので、少し注意が必要です。

アルビノ・・・メラニン色素を欠くため全身が白く目(虹彩)が赤い系統です。先天的疾患が現れやすく、総じて虚弱となりやすいので、初心者は避けたほうが良いでしょう。

イノ・・・虹彩が赤いシルバーの系統をこのように呼ぶ場合があります。アルビノ同様に総じて虚弱となりやすいので、初心者は避けたほうが良いでしょう。

アゲイト・・・アゲイトは宝石の瑪瑙(めのう)のことですが、胴体がノーマル的な色合いで頭と尾羽がシナモン的な色合いの個体のことです。絶対的な個体数が少なく、系統と言える程の遺伝子的安定性があるのかも不明な段階なので、専門的な人以外は避けたほうが良いでしょう。

ブルー・・・ノーマルのお腹の色が濃いヨーロッパからの輸入系統を呼ぶ場合と、シルバーの青みが強く空色に近い個体を呼ぶ場合があり、混乱しているように思われます。空色に近い方が「ブルー」のイメージに合致しますが、系統となっているのかもよくわかりません。

並文鳥・・・現地で捕獲され輸入販売されていた野生の文鳥のこと。現在は流通していません。

※ 一部の飼育書が紹介したため誤解されがちですが(「違う種類です」と注意書きするくらいなら取り上げるべきではなかったと思わないでもないです)、クチバシが黒く体色は茶系統のチモール文鳥は、文鳥の品種ではなく別の種類の生き物です(近縁種。誤解が起きるので以下『チモール』)。『チモール』は現在野生での個体数が少なく、捕獲され輸入されることも無いはずなので、現在日本で飼育される方がいるとしたら、以前に輸入された野生『チモール』の個体から(一昔前はペットショップで売っていました)、大変な努力をされて自家繁殖をして、代を重ね、個体数を増やされたものと思われます(お店では見かけなくなって久しいので、ブリーディング個体の増加は 順調ではないのかもしれません)。

 

◎ 品種になりきれない色柄は、個体数が少なく虚弱の傾向が現れがちになります。

 同一の遺伝子的特質を持つ個体を増やす必要があるので、ペアリングの相手が近親になっている可能性が比較的大きくなります(珍しい色柄のグループほどその可能性が増していく)。近親間の交配を続けると、「近交弱勢」と呼ばれる遺伝学的現象が起き、軽度な虚弱体質から重度な奇形などさまざまな先天的疾患の可能性が高まり、特に問題がなさそうでも不妊性(子孫を残す能力を持たない。つまり産むのは無精卵のみ)であることも多くなります。
 当然、白文鳥や桜文鳥の両親でお互いに血縁関係がなくても、子供に先天的な疾患や障害が現れる可能性はありますが、近親ではその可能性が高まるのです。

 手のりにして一緒に遊ぶ点に文鳥の魅力を最も感じる場合は、健康を一番に考えて、変わった色柄は避けるのが無難です。

 


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